安心、安心。

 タイトルで分かる方、僕と友達になりましょう。分かる人には分かる。分からない人には、全くさっぱり。漫画「鉄コン筋クリート」の登場人物、シロの口癖とも言うべき台詞です。
 見てきました。映画版「鉄コン筋クリート」。いやー、よかった。文句のつけようのない仕上がりです。作ったスタッフ、全員素敵!
 もうね、僕的には見ない理由がない作品だったんですよ。まず大体からして、松本大洋の作品好きですし。「ピンポン」と「鉄コン筋クリート」。我が家にある松本大洋作品。何度読んだことか。それでいて、作った会社がSTUDIO4℃でしょ。出会いはショートムービーを集めた「Grasshoppa!」でした。その中の、どの作品を作ってたか分かりませんけども。でも、その中に出てた作品は全体的に好きで。っつか、「Grasshoppa!」は作品の立ち位置が好き。こういうの作るのって、結構大変だったんじゃないかなーと。ショートムービーを集めた作品自体が、あまりないでしょ? しかもそれをきっかけに、アニマトリックスでもっと好きになって、最近では倖田來未とフィーチャリングしてるじゃないですか。いやいや、いいポジションに来てるよ、STUDIO4℃って思ってたところに、これだもの。脳天直撃とは、こういうことを言うのね。「鉄コン筋クリート」をSTUDIO4℃が作るって、あなた。企画を通した誰かさん、愛してる! そんな叫びを、別に世界の中心でなくとも叫びたくなる気分になりましたよ。
 さらにさらに。声優が蒼井優二宮和也。二人とも、僕の中で株急上昇してる人なんだもん。蒼井優は「花とアリス」、「リリィ・シュシュのすべて」でしょ、二宮和也は、「硫黄島からの手紙」とかでしょ。ま、「硫黄島からの手紙」に関しては、残念ながら見てないのですが。「父親たちの星条旗」とセットで見なあかんと思って、でも金銭的にちょっと、という感じだったので。でも、あれで軽いハリウッド進出でしょ。うーん、日本代表しちゃってるもんな、彼。
 そんな、涎だらだらのキャスティング。見ないわけないとは思ってたんですが、なにぶん、「鉄コン筋クリート」は、「愛の流刑地」とか「武士の一分」とかよりは、一歩最前線から引いたポジションにいるので、僕の住んでる地域のすぐ近くではやってないのですね。少々、ほんとにほんの少しだけど、遠出しなきゃいけない。そうでなければ、すぐ近くなのに。それをちょっと面倒くさがってしまった。ためらってしまった。そのために、タイミングを逃してしまって。バイトとかの時間の都合で、延ばし延ばしになってて、そのうちに一日に上映する回数が少なくなってきたりなんかしちゃったりして。危機感を感じたりしてたのですよ。あれ、これ、もしかしたら、ひょっとしたらひょっとするぞ、と。さ、今日は観に行けるぞ! って新聞開いたら、もう上映作品紹介の所に載ってないなんてことが。と、思いつつ、先日なんとか頑張って行ってまいりました。
 したら、大きな映画館だから、人ものっそい混んでるのね。人だかり。できてるの列じゃなくて、人の団子ね。えーと? これからどなたかの舞台挨拶ですか? みたいな。僕、一度諦めました。カップルや家族連れが、ふふふ、あはは、いやんばかんって並んでる所に、一人でぽつねんと並ぶなんて、そんなことできない。しかも、終わりの見えない長い列。もしかしたら、チケットを買える頃には、僕の心と体は朽ち果てているかもしれない。
 そんなこんなで挫けて、近くにあったヴィレッジ・ヴァンガードなんかに行ったりして。そこで、映画版「鉄コン筋クリート」の設定資料集みたいなものを、見つけて。確か二冊合わせて6200円也の代物だったんですけど、映画見れない代わりに、これ買って帰ろうかな、みたいな。映画見ずに設定資料集なんて言う、傷心故の本末転倒も、しょうがないじゃん、理にかなってるじゃん、なんて呟いたりしてました。傷心な上に、その日、午後一時頃を過ぎているのにも関わらず、睡眠時間ゼロだったもので。眠いよう。お腹減ったよう。そんな呟きを抱えながら、彷徨い歩いてました。とあるショッピングモールを。
 で、一度諦めたんですけど、そこからちょっとなんとか持ち直して、もう一回じゃ! もう一回トライして駄目だったら、もう帰る! 帰って、クソして寝る! って思って、トライ・アゲイン。そしたら、列が激減してて、これなら大丈夫、ということで並び、チケットを買いました。いやー、よかったよかった。
 映画の出来に関しましては、あれ以上は、何も求めるものがないよ、という完成度でした。しかも、よくよく見てみたら、そりゃ松本大洋の絵とは違う。違うはずなのに、脳内では〝漫画とは寸分違わぬ〟レベルの評価になってるんですよね。なんでなんだろ?
イノセンス」のときにも、あれだけ小物にこだわるのって、すげえなあ、と思ってたのですが、「鉄コン筋クリート」は、さらにその上を行きましたね。はんぱないです。あの街の存在感。でも、すごいなあ、と思いつつ、あれくらい街の描写をしてくれないと、「鉄コン筋クリート」は成り立たなかったんだろうなあ、と思いながら見てました。
 でも、どうなんでしょうね。僕なんかどっぷり〝鉄コン好き〟だから、文句のつけようがないって感じなんですけど、漫画を知らない人が見ても、大丈夫なのかなあ? とは思いました。伝わってるのかなあ、僕らの感動。もしかしたら、あの感動はちょっと分かりづらいのかもしれないなあ。映画になると。たぶん、漫画の方が分かりやすいかも。
 しかしね、展開分かってるのに、ちょっと泣きそうになったもんね。よかったなあ、映画。
 一つ言えば、もしかすると、声がちょっと、って人がいるかもしれませんね。でもたぶん、映画版「鉄コン筋クリート」は何度見ても飽きない作りになってると思うので、何回か見てるうちに、気にならなくなるんじゃないかなあ。
 もう既に、僕の中ではDVD買うのは決定事項なのでした。というか、できれば設定資料集の方も買いたい。むーん。どうしようかなあ。
 財布の中身は、「安心、安心」とは言い難い、伊藤魂でした。